小さな世界。
旅館というのは、不思議な場所だ。
日常と非日常の境目にあって、外の世界と切り離されたようでいて、でもどこか、自然や人の営みとやさしく溶け合っている。
オープン当初からずっと思ってきたのは、「ただ泊まる場所」ではなくて、「ここにしかない小さな世界」を築いていきたい、ということ。
風の音や、川のせせらぎ、虫の声や、季節の光。
それをただ“背景”として扱うのではなく、しらさぎ荘という“空間そのもの”の一部にしていくこと。
自然に溶け合って、無理をせず、人と人が呼吸を合わせるように、空間と空間を繋いでいく。
館内には、なるべく人工的な音が響かないようにしている。
蛍光灯ではなく、やわらかい灯りを。
ムードミュージックではなく、静けさや、人の息遣いを。
照らしすぎず、飾りすぎず、そこに“あるべきもの”だけを置く。
「外」と「内」が混じり合うように設えた空間で、お客様が何も語らずとも、ほっと息をつけるような、そんな場所でありたい。
わたしたちが築いているのは、「しらさぎ荘」という名の、ひとつの世界。
日々、その世界のバランスを見つめながら、静かに育てている。