この宿に伝わる「座敷童子」について|人吉温泉しらさぎ荘 女将の徒然日記

しらさぎ荘には、昔から「座敷童子がいるらしい」というお話が、
お客様の間で、そっと語られてきました。
誰かが見た、という話。
誰かが感じた、という話。
はっきりとした形があるわけではなく、
それでも不思議と、長い時間をかけて語り継がれてきた言葉です。
私は女将としてこの宿を預かるようになってから、
この「座敷童子」という言葉と、ずっと静かに向き合ってきました。
正直に言うと、
私は「いる」「いない」を断定できるほどのものは、何一つ持っていません。
ただ――
この宿に流れる空気、
朝の湧水池の音、
夜に灯りを落とした館内の気配、
ここに立っていると、
「大切に見守られている場所なのだな」
そう感じる瞬間が、確かにあるのです。
それが目に見えない存在なのか、
この土地に積み重なった人の想いなのか、
あるいは水や風が運んでくる自然の力なのか――
それは、私にも分かりません。
けれど、
この宿を訪れてくださるお客様が
「なんだか落ち着きますね」
「ここにいると、気持ちがやわらぎます」
そう言ってくださるとき、
私はいつも、胸の奥でそっと「ありがとうございます」と思います。
大正八年の創業から、百年以上。
この場所は、
戦争も、疫病も、そして水害も、
たくさんの時代の変化を越えて、今もここに在ります。
宿とは不思議なもので、
建物だけではなく、
そこに集った人の思い出や、言葉や、祈りのようなものが、
少しずつ積み重なっていく場所なのだと、年々感じるようになりました。
「座敷童子」という言葉も、
きっとそうした長い時間の中で生まれた、
この宿を大切に想ってくださる方々の
やさしい物語のひとつなのだと思っています。
私は、特別な力を持つ人間でもありませんし、
不思議なことを語れるほどの存在でもありません。
けれど、この宿を守り、手入れをし、
一日一日を積み重ねていく中で、
「ここは人の心が少しやさしくなる場所でありたい」
そう願いながら日々を過ごしています。
もしこの宿で、
誰かがふと、あたたかい気配を感じたとしたら。
それはきっと、
この土地の水や風、
そして長い年月をかけて宿を愛してくださった人たちの想いが、
その方の心にそっと触れた瞬間なのかもしれません。
目に見えないものを、無理に形にすることも、
無理に説明することも、私はしません。
けれど、
この場所に流れるやさしさと静けさは、
これからも変わらず、大切に守っていきたいと、女将として思っています。
今日もまた、
湧水の音が静かに響いています。
その音に耳を澄ませながら、
変わらぬ一日を、ありがたく過ごしています。
近く、この宿にまつわる座敷童子のお話が、ひとつの形として語られる機会もあるようです。
そのとき、また皆さまと一緒に、静かに耳を澄ませられたらと思っています。
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熊本県人吉に位置する平成の名水百選の池のある1日限定5組。大人の隠れ宿。
人吉温泉しらさぎ荘の効能溢れる源泉掛け流し温泉は、窓を開けると半露天風呂にもなる内湯付離れと家族風呂・貸切風呂もございます。
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お食事は地産地消の食材を用いておもてなし。
記念日やお祝いの席、法要やご会食など“お食事のみ”のご利用も承っております。
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離れ「葵」「侘助」には源泉掛け流しの内湯を、
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